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映画「道草(みちくさ)」評

見たいと思っていた映画「道草」が上田で上映されると聞き、行ってきました。
上田映劇、街の中にある古いシアターで、今はNPO法人上田映劇が運営するコミュニティシネマとして運営されています。
きれいなシネコンとはまた違ったレトロで素敵な空間でした。

この映画は4人の知的障害と自閉症の当事者と支援者、家族を追いかけたドキュメンタリー。
グッドライフ、自立生活企画、練馬区介護人派遣センターという団体を追いかけています。
公園の花鳥風月などの自然の描写も美しく、そっちも見入ってしまいました。

当事者も家族も支援者もとても魅力的でした。大変な時期もあったのだろうけど。なんというか対等なんですよね。

面白がったり、驚いたり、一緒に楽しんでいたり・・。

登場する支援者の支援に関しては見ている限りは音声言語のみでのやり取りで、視覚支援(筆談)、選択肢の提示、バウンダリーの設定など支援技法には物足りなさや突っ込みどころはあり、スケジューリングや筆談などを加味すれば3倍くらい本人の気持ちに近づけるコミュニケーションができるかもとはおもましたが・・。

親離れ子離れのために、重度知的障害と自閉症の方が親以外の支援者(重度訪問介護と行動援護)の助けを借りて地域で一人暮らしをするというのはありだなあと思いました。

登場する支援者の言葉。
「何故こういういう人たちは世界に必ずいるんだろう。意味があると思うんですよね。」
「自分の感情とかよくうまく出せないが、人のことはよく見ている人たち」
「一緒にいて楽しい。そう思わせてくれるところはあります。うんと大人になりましたよ。昔はもう。かなり成長してる。」

彼らとちょっとですが関わって、自分もそれは思います。
行動障害といわれるものは社会の矛盾、人権侵害などを全力で訴えているのだとも、そして私達をアップデートしてくれる存在だとも。

登場する親、「内緒にしているとかえって損なんです。」
これも、本当にそう思います。でも誤ってばかりで親も疲れ果ててということもあります。ゆっくりと育つ彼らへの社会の理解が必要ですね。

あと、都会の行動援護は家から歩いて出て電車などにのって外出というのがいいなあと思いました。
身体も使うし疲れてよく眠れそうです。
地方の行動援護は車でのお出かけが多いので、出先だけでの活動と社会との関わりになりますので。

上映後、宍戸監督と上田エリアの支援者、親のトークもありました。

宍戸監督いわく
「ある地域移行の集会である親が施設がいいなんて親の思い込みでしかないと非難されていたのが痛ましかった。背景を共有していない中で責めても意味がない。話をきちんと聞かなきゃいけないと思った。

自立支援企画の支援者たちは、「自由だし自分の型にはめないような人たち。」
以前、施設支援者の住み込みで取材していたが、障害のある人たちは面白く自分のヨロイを外してくれるのだが、支援者のきちっと感がきつかった。
その違いが映画を撮りたかった理由の一つだとのこと。
その事業所は「素人の方がいいといって採用している。本人から学んでね。戸惑うことも含めて一緒に学んでね。」と。

親の立場のスピーカー:
「障害のある子どもを抱えて、これはきれいごとでは生きていけないなと思った。パニックになったときとか、気持ちにどう寄り添えるか、知識は必要だがあったからといって上手くいくとは限らない。支援者の方も楽しんでいる感じかいいなと。 こちらの都合で子どもに要求してしまった時は本当にうまくいかない。困るのが当たり前、悩むのが当たり前。わからないこそ投げかねて、ユーモアがあるので楽しんでもらいたい。
家にいる安心感も分かるが家にいる苦しさも分かる。 息子に「おうちは安心で大好きな場所だけど、ほかに同じような年齢の人と楽しみたいんだ」といわれた。」

本人たちの望む場所での望む暮らしを、どうやって保証するか。
そのヒントがこの映画にはありました。
驚きとともに彼らに伴走し、社会との間に立てる応援団になれる人が増えていくことを願います。

上田映劇では5月12日まで(5月9日は休み)、長野ロキシーで7月6〜12日にも上映会あります。


中信エリアでも上映会企画しませんか? すでに考えている方いますか?いればご一緒に、いなければ実行委員会作って上映会イベント企画しませんか?
50人まで一人1000円、それ以上は一人500円、宮城から監督を呼ぶのは3万円(交通費宿泊費別)だそうです。
自主上映会について




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